励ましの言葉が持つ毒

 

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「〇〇は、そのままの〇〇でいいんだよ」という言葉を、耳にしたことのある人は多いはず。実際に使ったことのある、もしくはそういう言葉を掛けられたことのある人もいると思います。

自分が弱っている時、自分で自分自身の在り方・状態を受け容れられない時、自分自身に否定的な感情を持ち否定したくなっている時にこの言葉を掛けられると、不思議なことに気持ちが楽になって、沈んだ気持ちから脱することが出来ます。

 

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「あなたはそのままでいいんだよ」

 

とても心地が良い言葉です。人と比べて劣等感を感じる必要は無い、あなたはあなたの生き方をしていればそれで良いのだというメッセージが真っ直ぐに伝わってきます。

 

しかしいざ使おうと思いよく吟味すると、私にはこの言葉がとても無責任な言葉に聞こえてきました。

 

「自分がどうしても受け容れられない状況を他者から肯定された、その時点で苦しんでいる相手は救われたんだ、良いことしたな」という発言者の自己充足感が垣間見える気がしてなりません。この言葉を発する人が、本当にその人のことを考えているようには思えず、所詮他人事として軽くあしらっているようにしか思えないのです。

「相手と誠実に向き合う」ことを掲げている人は、他者を励ます時によくこの言葉を使っているような気がしますが、その多くの人が相手と向き合っている”フリ”をしているだけで、本当は自分の充足感を満たす方向にベクトルが向いていることが多い気がします。

 

本当にその人のことを考え、幸せを願うのであれば、その人がそのままの状態で良いわけがありません。今の自分が抱える状態に対して不満を感じていて受け容れられないでいる、不幸感を感じている相手に対して「そのままでいいんだよ」というのは、一見相手のことを肯定して相手に自身を持たせているように感じますが、実際はただ当り障りのないふんわりしたことを言っているだけです。

また、その言葉を受けた人は感じる安心感は一瞬の感情に過ぎず、何の問題も解決していません。おそらく、同じことで再び悩む時がくるでしょう。

 

この言葉の厄介なところは、「私はこんなにあなたのことを理解しているよ、だから大丈夫だよ」という一時的な安心・まやかしの居場所を与えるという点なのです。

これは、相手の成長を阻害するだけでなく、自分のことを承認してくれる居心地の良い幻想の世界でしか生きることが出来ない人間を形成することにも繋がりかねません。それは、相手が生きていく場所をどんどん縮めていき、視野の狭い人格を形成します。

相手と真摯に向き合い心から思っているのであれば「そのまま」で立ち止まるのではなく、その一歩先を指し示してあげることが重要です。

 

「あなたはそのままでいいんだよ」

 

「〇〇をするだけでお金儲けが出来ます」のように、心地よく聞こえる言葉の裏には毒があります。相手を受容し元気づけてあげようとするのであれば、もう一歩先まで踏み込んであげて下さい。それはあくまでも提案であり、お節介ではありません。それこそが真の優しさであり、相手と真摯に向き合うということなのではないかなあと思います。

 

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